階ごとの用途の振り分けは素直で、諸室の構成にも無理は少ない。多少気になることがあったにしても、給水塔に居住するという大きな構想の前には些細なことといって良い。
玄関ドアなどの一部には独特な表現が見られるものの、全体的には控えめなデザインである。そのために一層コンクリートの柱と、大きなハンチのついた梁が強調される結果となり、これらの物量の住宅に見合わない過剰さが空間を支配している。特に1階と2階は階高が4.5メートルあり、住宅にしては天井の高い部屋が作られているのだが、居住空間と構造フレームとの距離感(スケールやデザインの)が一層裸の構造体を浮かび上がらせ、機能としての住宅を越えるものの存在が強く伝わってくる。
このような空間を上階へと上って行くと階段は4階までで終わっている。最上階は暗闇で
スチールの梯子を伝って切り欠かれた給水タンクの 底から入り込む。空中に浮かぶ120
立方メートルの闇の空間から、錆止め色のスチールのアングルで作られた昇降機に乗って
屋上に抜けると、コンクリートの圧倒的な重量感から解放されて光の中であった。